ベトナム語はどのくらい難しい言語なのでしょうか?
ベトナム人にその答えを聞いても、いい答えは返ってはこないでしょう。実は、公用語であるベトナム語の難しさは、9000万人の国民の国民的誇りになっているのです。現地の人々は、必ず「tiếng Việt khó!(ベトナム人は難しい)」と嬉しそうに答えるはずです。
ベトナム語学習
【ベトナム語の学習方法】僕がどうやってベトナム語を勉強したか?
トマトのベトナム語ボックス
ベトナム語を勉強している人は今までずっと苦労してきたはずですし、勉強しようと考えている人であれば、ベトナム語の難しさに心が折れてしまうでしょう!ですので、この記事では、別の視点からベトナム語を考察し、ベトナム語は思っているより簡単だということをみなさんに伝え、今ベトナム語を勉強している人や、これから勉強しようと考えている人に励みになればと思います。
確かに、ベトナム語には、英語にはない6つの声調と珍しい音の母音がたくさんあり、ベトナム語の発音は難易度が高いのですが、ベトナムに住む駐在員のほとんど(私も1年間滞在していました)は、ベトナム語において唯一の難点なのは発音だと認識しています。発音以外の文法や文字などは実は非常に簡単なのです。特にヨーロッパ言語と比較すると、ベトナム語ははるかに簡単です。
まだ私の言うことを信じてくれませんか?では今からベトナム語が思っていたよりも簡単である9つの理由をお話したいと思います。
1.男性名詞・女性名詞の区別がない
フランス語、スペイン語、ドイツ語、または英語以外のヨーロッパ言語を学んだことがある人であれば、ベトナム語には「男性名詞」、「女性名詞」という概念がないということが、どれだけベトナム語の難易度を下げるか理解できると思います。書いてある通りの、そのままの単語を覚えさえすればよいのです。
2.「a」と「the」の区別がない
英語を勉強している人が、単語の前に「a」かもしくは「the」を付ける場合の違いを聞かれたとしたら、英語話者であるあなたは上手く説明できますか?実は、この問題は驚くほど難しい問題です。その証拠にWikipedia の「冠詞(「a」や「the」)」についてのページは何ページにも渡り、とても長い説明がなされています。
しかし、「ある何か(「a」の付く名詞)」について話しているのか、それとも「その何か(「the」の付く名詞)」について話しているのかを区別することは、本当にそこまで重要な事なのでしょうか?通常、文脈から、どちらのことを指しているかは明らかです。「Người(「人」という意味)」は「a person」または「the person」の両方を意味しますが、文脈からどちらのことを言っているのか明確なので、その区別は気にしなくてもかまいません。
3.複数形がない
英語では、複数形にする場合、例えば「dog(犬)」は「dogs(犬たち)」に、「table(机)」は「tables(複数の机)」に、「house(家)」は「houses(2棟以上の家)」のように名詞の後ろに「s」を付けます。しかし、例外もあり「Person」は「people」、「mouse(ネズミ)」は「mice(2匹以上のネズミ)」、「man(男性)」は「men(2人以上の男性)」になります。複数形になると名詞自体が変化します。また「sheep」や「fish」などのように、一部の単語は複数形にしても、形は変わりません。
ベトナム語では、すべての名詞が「sheep(羊)」や「fish(魚)」などのように、複数形になっても形が変わりません。先ほど出てきた「người」という単語は、「人」という意味ですが、単数形でも複数形でも同じ単語を使います。同じように「chó」は「dog」または「dogs」、「bàn」は「table」、「tables」のどちらも意味します。複数形がないなんて、ややこしいと思う方は、自問してください。誰かが「sheep」または「fish」の話をしていた時に、あなたの人生で一度だけでも、「sheep」や「fish」が何匹いたか分からなくなって、困った経験はありますか?(ありませんよね!)
もし本当に具体的にする必要がある場合は、名詞の前に「một người(1人の人)」、「nhũng người(数名の人)」、または「các người(すべての人たち)」などの単語を付け加えてください。
そして、簡単なのは名詞だけではないのです…
4.紛らわしい動詞の活用がない
スペイン語は動詞の形の活用形がたくさんあって、学習者はとても大変です(話す)」という意味を表す基本的な単語「hablar」をとっても、学習者は現在時制だけでも5、6個(方言に応じて異なる)の動詞の活用形を覚えなければなりません。I hablas、you hablas、he habla、we hablamos…のように主語に違うと動詞が活用されます。文法的な「ムード」(直接法や接続法など)や、時制によっても形が変わります。
スペイン語の動詞(その他名詞、形容詞など)が活用されることで、同じ単語が文脈に応じて異なる形式をとることができることを意味します。英語の動詞はスペイン語ほどそこまで活用されませんが、たとえば、英語でも「speak(話す)」という単語は、「speaks」、「speaking」、「spoken」、「spoke」のように活用します。
でも、うれしいことにベトナム語にはその動詞の活用がないのです!ベトナム語は完全に非屈折言語であるため、どんな文脈でも動詞が活用されることはありません。単語「nói(話す)」は、どんな文脈や時制においても、「nói」という形で使われます。例えば、I nói, you nói, he or she nói, we nói, you all nói, they nói.のように使います。そのため、どのヨーロッパ言語よりも、ベトナム語が簡単で学習しやすいということが分かると思います。
他のヨーロッパ言語を学んだ経験のある人は、とても安心して頂けたと思います。
5.時制は2分で習得
ベトナム語の時制(テンス)は非常に簡単です。例えば、動詞「ăn」(食べる)を例に出しますが、その動詞の前に次の5つの単語のいずれかを付けるだけで異なる時制を表現できます。
- đã = 過去形、完了
- mới = 近過去、「đã」よりも近い過去
- đang = 進行形
- sắp = 近未来、近い将来
- sẽ = 未来形
(まだ他にもいくつかありますが、この5つを押さえるだけで時制の99%はカバーできます)
それでは、具体例を見ていきます。(「tôi」は「私」を意味します)
- Tôi ăn cơm = I eat rice(私はご飯を食べます)
- Tôi đã ăn cơm = I ate rice(私はご飯を食べました)
- Tôi mới ăn cơm = I just ate rice, I recently ate rice(私は今ご飯を食べたところです。最近ご飯を食べました)
- Tôi đang ăn cơm = I am eating rice (right now) (私は今ご飯を食べているところです)
- Tôi sắp ăn cơm = I am going to eat rice, I am about to eat rice(私はご飯をたべようとしています)
- Tôi sẽ ăn cơm = I will eat rice.(私はご飯を食べるでしょう)
さらに、文脈から明らかな場合、これらの時制を表す単語を省略することができます。たとえば、「tôi ăn cơm hom qua」で「昨日ご飯を食べました」-過去を表す「đã」がありませんが、正しいベトナム語です。
おめでとうございます!ベトナム語で色々な時制を習得できました!そんなに簡単じゃないって?!
6.新しい文字を覚えなくてもいい
これに関しては、ベトナムを統治してくれたフランスに感謝です。約100年前まで、ベトナム語は(当時読み書きを学んでいた、ごく一部の人でした)、現在の漢字に似たChữ Nôm と呼ばれる複雑な文字を使用して書かれていました。今では、Quốc Ngữと呼ばれるラテンアルファベット(英語で言うところのアルファベット)に完全に取って代わられています。北京語、広東語、日本語、タイ語、カンボジア語、韓国語、ヒンディー語、または他の多くのアジア言語を学習する場合と違い、ベトナム語を読むために新しい文字を学ぶ必要はありません。必要なのは、主にアクセントを示すために使用されるたくさんのアクセント記号(専門的には「ダイアクリティカルマーク」)を学ぶことです。
実際、ベトナム語は英語よりも簡単に読めます。その理由を次に説明します。
7. つづり(スペル)に一貫性があり明確
それでは、質問です!英語の単語 “read”、 “object”、 “close”、および “present”はどのように発音しますか?それは「近い」を意味する形容詞の「close」ですか、それとも動詞の「close」ですか?贈り物を意味する「present」ですか?それとも動詞の「掲示する」という意味の「present」のことですか?「read」は過去形ですか、それとも現在形ですか?(「read」は現在形も過去形も同じ形を取る)同じく「object」は名詞の「対象」という意味ですか?それとも「反対する」という動詞として発音しましたか?
英語のつづりは、私が知っている他のどの言語に比べても一貫性がなく、同じ単語でも多くの場合、文脈に応じて発音が異なることがあります。また、同じ文字でも単語によって、発音が異なってきます。例えば 「catch」、「male」、「farmer」、「bread」、「read」、「meta」の中の「a」です。おなじ「a」なのに発音が違いますよね。組み合わせによって発音が変わる矛盾に溢れた英語や綴りはとても紛らわしいです(接尾辞の「ough」などあまり意味をなさないものもあり、英語の学習者は、英語の単語のスペルや、読み方が分からずとても苦労しています)
一方、ベトナム語には、このような複雑なことは一切ありません。同じ文字は、単語や文脈に関係なく常に同じように発音されます(注意:しかしサイゴンで使われるベトナム語は少しこれと矛盾する例もありますが、ハノイで使われるベトナム語は単語や文脈に関係なく常に同じように発音されます )ベトナム語の28文字(英語の26文字とほぼ同じ)をそのまま読めばいいだけです。そして、それに加え、5つの声調を覚えれば、どんなベトナム語も読めるようになります。簡単ですね!
8.実質的には文法は存在しない
前述のように、ベトナム語には時制があってないようなものです。(例えば、「I eat rice yesterday」という文が成り立つ)文脈から明らかであれば、過去を意味する単語を動詞の前に付けなくてもいいのです。こういった類のルールはベトナム語にはたくさんあります。つまり、ベトナム語の文法は非常にシンプルなのです。極端に言えば、要点を理解するために必要な最小限の単語をつなげれば、どんなに英語訛りが強くても、通じるのです。
ベトナム人が英語を話す時、「no have(持っていない)」や「where you go(どこに行くの)?」のような不完全な英語の文章で話すのはこのためです。彼らは、英語ではもっと複雑な文法があるのを忘れていて、ベトナム語での言い方を英語に直訳しているだけなのです。これは、英語を学びたいベトナム人にとってとても不利になりますが、逆に英語話者にとっては、ベトナム語はとても簡単な言語だということです。
9.語彙はとても論理的
ベトナムにいるほとんどの外国人は、たとえベトナム語を話さなくても、xe ôm(ベトナムのユビキタスバイクタクシーの現地名)が文字通り「ハグして乗る車」という意味だという面白い事実を知っています。 ベトナム語の語彙のほとんどは、論理的に2つの単語を組み合わせることによって形成されています。英語では、まったく別の新しい単語を覚えなければいけません。
例えば、「máy」は「machine(機械)」を意味し、「bay」は「飛行」を意味するのですが、では、「máy bay 」となるとどういう意味を表す単語なのか分かりますか?
他にも似たような例がたくさんあります。ベンチは「long chair(長い椅子)」であり、冷蔵庫は「cold cupboard(冷たい棚)」であり、ブラジャーは「breast shirt(胸シャツ)」であり、自転車は「pedal vehicle(ペダル車)」 スキーをすることは「to slide snow(雪を滑らせること)」、トラクターは「pulling machine(引っ張る機械)」、七面鳥は「western chicken(西洋の鶏)」、シマウマは「striped horse(縞模様の馬)」…他にも例を挙げるときりがありません。こういった単純な単語の組み合わせで言葉が成り立っているので、新しい語彙の暗記が大幅にスピードアップします!基本的な単語の基礎を築くと、数百の新しい単語が自動的に分かるようになるので、どんどん語彙量は増えていきます。
ベトナム語はあなたが思っている以上に簡単です
ベトナム語はあなたが以前考えていたよりも簡単かもしれないとご納得いただけましたか?
あなたがベトナム語について思っていた誤解を解いて、ベトナム語がどのように機能するかご理解頂けたのであれば嬉しいです。